長角亜目 Nematocera

このページでは、検索や説明を簡略化するため、科の一般的な特徴を挙げて同定の指標としています。そのため、例外的な形態を持つ種などはうまく絞り込めない可能性があります。予めご了承ください。

なおこのページで扱った科・属・種は、原則として日本から知られているものに限ります。日本国外で得られた種の検索には十分適応できないと思われますので、ご了承ください。

特徴 I

 

Nymphomyia sp. (Courtney 2004)
Nymphomyia sp. (Courtney 2004)

・翅の縁に多数の毛が生えている

・胴体は細長く、体長約2mm

・翅脈は退化的 

・渓流で多数飛翔している

 

ハネカ科(Nymphomyiidae)です

 

世界に30種程度しかいない小さな分類群。日本には未記載種を含め3種以上が生息。採集例は非常に少ないので、 見つけ次第どこかに報告されることをおすすめします。

 

特徴Iに当てはまらない→IIへ 

 

特徴 II   

 

Blepharicera fasciata (Grünberg 1910)
Blepharicera fasciata (Grünberg 1910)

・翅に多くの皺や折れ線がある

脚は細長い 

渓流で見られる

 

アミカ科(Blephariceridae)または

 アミカモドキ科(Deuterophlebiidae)です

 

日本からは、アミカ科は6属27種、アミカモドキ科は1属1種 (ニッポンアミカモドキ) が記録されています。アミカ科は触角が6節以上ですが、アミカモドキ科では4節なので区別出来ます。

幼虫は渓流の岩の上に張り付いて生活していることが知られています。アミカ科の種までの検索は、三枝(2008)にあります。 

 

特徴IIに当てはまらない→IIIへ 

特徴 III   

 

Tipula paludosa (above), Wing Vein of Tipulidae (below)
Tipula paludosa (above), Wing Vein of Tipulidae (below)

脚が非常に長い

・背側(中胸背板)にV字型の溝をもつ(ガガンボダマシ科では不完全)。 

・翅が右図下に似た脈を持つ 

・翅の付け根下から2本の脈が伸び、通常翅の縁まで達する(例外有り、後述) 

 

  →ガガンボ下目(Tipulomorpha)または

   コシボソガガンボ下目(Ptychopteromorpha)です

 

右写真上のような、いわゆるガガンボ型の双翅目は、分類学的に言うと2つの下目に分かれ、日本からはそこに属する7科が記録されています(以下)。

 

ガガンボ下目 (Tipulomorpha)

・シリブトガガンボ科(Cylindrotomidae)

・ヒメガガンボ科(Limoniidae)

・オビヒメガガンボ科(Pediciidae)

・ガガンボ科(Tipulidae)

・ガガンボダマシ科(Trichoceridae)

コシボソガガンボ下目(Ptychopteromorpha)

・コシボソガガンボ科(Ptychopteridae)

・ ニセヒメガガンボ科(Tanyderidae)

 

  体長数mmの種から、大型のものでは4cmを超える多様な種が生息します(脚の長さを除く)。各科への検索はここでは省略しますが、コシボソガガンボ科は前平均棍(prehalter, basal appendage)という器官があり、単眼がないという特徴で区別できます。またニセヒメガガンボ科は、上述した2本の脈が0-1本であり、臀葉という翅の下部の構造がよく発達するため、翅の特徴で他科と区別できます。

 

特徴IIIに当てはまらない→IVへ 

 

特徴 IV   

 

Cecidomyiidae (田中 2000)
Cecidomyiidae (田中 2000)

小型・繊細な双翅目

触角は長く、しばしば数珠状になる。 

・翅に細かい毛が生える。翅脈は単純。

・ふ節第1節が非常に短い(右図)

 

  →タマバエ科 (Cecidomyiidae) かユスリカバエ科(Thaumaleidae)の可能性が高いです。

 

タマバエ科は体長1-3mm程度の種が多い科で、他の科と見分けるのは肉眼では難しいです。単眼があり、左右の複眼は頭部で接します。触角は長く、10-36節からなります。

一般に翅脈は単純で、亜科や族の違いによって翅脈パターンが異なります(下図はその一部)。

Lestremiini 族 (左)、Cecidomyiinae 亜科 (右)の翅脈
Lestremiini 族 (左)、Cecidomyiinae 亜科 (右)の翅脈
Thaumaleidae の翅脈
Thaumaleidae の翅脈

 

またタマバエ科に比較的よく似た科として、ユスリカバエ科(Thaumaleidae)があります。こちらは触角が数珠状にならず、9-10節になることや、翅脈の違いで見分けられます(右図)。

 

特徴IVに当てはまらない→Vへ 

 

特徴 V   

 

Leptosciarella subspinulosa, Sciaridae (above)、Mycetophila vulgaris, Mycetophilidae (below)
Leptosciarella subspinulosa, Sciaridae (above)、Mycetophila vulgaris, Mycetophilidae (below)

・中脚、後脚の脛節に端刺がある(矢印)。

触角は長い。

・翅脈のC脈(一番外側の太い脈)は翅の端に達する。

 

 →クロバネキノコバエ(クロキノコバエ)科(Sciaridae)、またはキノコバエ科 (Mycetophilidae) などの可能性が高いです。

 

どちらの科も、市街地や公園など、身近な環境でもよく見られる種を多く含みます。

 

キノコバエ科は複眼が離れ、脛節の端刺が大きく目立つ、などの特徴がありますが、種数が多く、形態は比較的多様です。

 

クロバネキノコバエ科は複眼が接し、翅が黒い種が多いです。また左右の複眼が眼橋という構造でつながっているのが特徴です。害虫と扱われることも多い科ですが、分類学的には未解明な点が多く、世界的にも多くの未記載種を抱えています。

 

キノコバエ科、クロバネキノコバエ科に外見が似る科

カモドキ科 (Lygistorrhinidae)

チャボキノコバエ科(Diadocidiidae)

ツノキノコバエ科(Keroplatidae)

ヒゲタケカ科 (Macroceridae)

ホソキノコバエ科   (Bolitophilidae)

 

以上はキノコバエ科に含むこともある科であるため、外見的には非常に類似する点が多くあります。日本産の既知種は多くありませんが、まだ未記録種を相当数含む可能性があります。キノコバエ科やクロバネキノコバエ科とは、翅脈の違いなどで区別出来ます。

 

ケヅメカ科(Ditomyiidae)

キノコバエ科などと非常によく似る科。R2+3脈がある点などで区別されます。

 

ヒメカバエ科(Mycetobiidae)

日本からはナミヒメカバエ Mycetobia pallipes 1種のみが記録されていますが、まだ未記録種が残っていると考えられています。こちらも翅脈相などで区別出来ます。

 

キノコバエモドキ科(Pachyneuridae)

主に大型の種が所属する科。日本からは2種の記録がありますが、他の未記載種の存在が知られています。ガガンボにも似る種。

 

特徴Vに当てはまらない→特徴VIへ

 

特徴 VI   

 

Sylvicola cinctus (Above), Sylvicola wing vein (below)
Sylvicola cinctus (Above), Sylvicola wing vein (below)

・ふつう翅に黒斑がある。

・翅室 (d, dm) がある(右図下)。

 

 →カバエ科(Anisopodidae)かハルカ科(Pachyneuridae)の可能性が高いです。

 

カバエ科は森林や湿地に生息する、比較的原始的な科です。体長2-18mmで、世界に約100種ほどの小さい科です。単眼が3つあるのが特徴です。

 

ハルカ科翅に斑紋があり、カバエ科に似ますが、より大型となります。日本のハルカ科は ハマダラハルカ Haruka elegans だけしかおらず、1属1種なので区別しやすいです。

 

特徴VIに当てはまらない→VIIへ 

 

特徴 VII   

 

Chironomidae (above), Ceratopogonidae (below)
Chironomidae (above), Ceratopogonidae (below)

小型・繊細な双翅目

触角は長く、触角に目立った刺毛が多く生える種が多い。

・M1脈、M2脈(M1+2脈)がある(下図)。翅に細かい毛が生える。

 

  →ユスリカ科 (Chironomidae)、ヌカカ科 (Ceratopogonidae) の可能性が高いです。

 

  体長1-3mm程度の種が多い科ですので、肉眼で見分けるのがやや難しいです。ユスリカ科は触角に顕著な毛があり、M1,M2脈が融合する(右図上、下図左)、ヌカカ科は単眼を持たず、M1、M2脈をもつ(右図下、下図右)などの点で区別出来ます。

 

下は各科の代表的な翅脈パターンです。もちろんこれに当てはまらない種も多くいますので、翅脈を頼りに探す場合、Drawwingなどのサイトが参考になります。

ユスリカ科(左)、ヌカカ科(右)の翅脈例
ユスリカ科(左)、ヌカカ科(右)の翅脈例

 

特徴VIIに当てはまらない→VIIIへ 

 

特徴 VIII   

 

Psychodidae sp.
Psychodidae sp.

・翅には多数の長毛がある。

・翅をたたむと逆ハート型。 

 

  →チョウバエ科 (Psychodidae)です。

 

 トイレや水辺でよく見られる仲間です。小さいガのようにも見えますが、翅が2枚しかない、れっきとした双翅目です。家屋に入り込む衛生害虫として知られる種や、吸血性の種もいます。

 

特徴VIIIに当てはまらない→IXへ 

 

特徴 IX   

 

ヒトスジシマカ Aedes albopictus (カ科)
ヒトスジシマカ Aedes albopictus (カ科)

・翅には多数の長毛がある。

・体や翅に鱗片がある。

 

  →カ科(Culicidae)ケヨソイカ科 (Chaoboridae、チスイケヨソイカ含む)です。

 

 吸血する種、マラリアを媒介する種など、双翅目の中でも害虫として悪名高い種が多く含まれるカ科は、知名度が高いのでパッと見で分かる人も多いかもしれませんが、触覚に長毛を持つユスリカなどと混同しないよう注意が必要です。日本のカ科は109種が記録され、分類群の解明度はほぼ100%です。一方ケヨソイカはカに似た外見ですが、知名度が低く害虫でもないため、研究は遅れています。なおケヨソイカは口吻が短い点でカと区別出来ます。

 

特徴IXに当てはまらない→Xへ 

 

特徴 X   

 

Dixa maculata (Walker, 1856)
Dixa maculata (Walker, 1856)

・特徴IXのカ科に似た体型。

・翅の縁に長毛や鱗片はない。 

・単眼がない。

 

  →ホソカ科(Dixidae)の可能性が高いです。

 

 翅の縁には短い毛がまばらに生えますが、カ科やケヨソイカ科のような長毛はありません。世界に200種弱が知られる小さい科で、種数は多くありません。

 

特徴Xに当てはまらない→XIへ 

 

特徴 XI   

 

Simulium trifasciatum (Curtis, 1838)
Simulium trifasciatum (Curtis, 1838)

・触角が短い。

・翅は幅広く、翅の縁に毛はない。

・黒くずんぐりとした体型の種が多い。 

 

  →ブユ科(Simuliidae)です。

 

 吸血性の種が多数所属するため、カ科同様比較的研究が進んでいる科です。世界に約1800種が所属し、日本には70種以上が知られています。

翅脈も他の科とあまり似ていないので、同定の際のポイントとして有効です。

 

特徴XIに当てはまらない→XIIへ 

 

特徴 XII   

 

Bibio pomonae, Bibionidae
Bibio pomonae, Bibionidae

・触角はふつうこん棒状で短い。

・翅のふちには縁紋がある、もしくは全体的に黒色を帯びることが多い。

・翅のRs脈は0-2分岐、基室は2つある。

 

  →ケバエ科(Bibionidae)、トゲナシケバエ科(Pleciidae)です。

 

ケバエ科春先~夏によくみられる種を含み、雑木林などでも多くみられるので比較的普通に見られます。毛深い黒色の種が多いですが、メスだけ赤色を帯びる種もいます。また雌雄で複眼の大きさなどがかなり異なることもあり、一見すると別種のように見えることもあります。

見慣れていないと、全体的なシルエットが短角亜目のオドリバエ科(Empididae)などに見えることもありますが、触角や翅脈などをよく見ると全く異なるので区別は容易です。

 

トゲナシケバエ科は、ケバエ科の亜科とすることもあり、形態的には非常に類似します。本科に含まれるPlecia属は、翅脈のRs脈が分岐することでケバエ科と区別できます (ケバエ科では分岐しない)。またケバエ科に比べて毛深くないことが多いです。

 

特徴XIIに当てはまらない→XIIIへ 

 

特徴 XIII   

 

Hesperinidae wing vein
Hesperinidae wing vein

・特徴XIIのケバエ科に似るが触角は長い。

・翅の縁にふつう縁紋がない

・翅のRs脈が分岐する(右図R4,R5脈)。

 

  →ヒゲナガケバエ科(ヒゲナガフルカ科、Hesperinidae)です。

 

ケバエ科の亜科とされることもあり、形態は類似します。ケバエ科やトゲナシケバエ科と違い、触角が非常に長くなる点で区別されます。

 

特徴XIIIに当てはまらない→XIVへ 

 

特徴 XIV   

 

Scatopsidae sp.
Scatopsidae sp.

・体長1-5mmと小型。

・触角はふつう短い。

・翅の一番外側のC脈は太く、翅先端まで手前で終わる(写真)。

・翅に基室は1つしかない。

 

  →ニセケバエ科(Scatopsidae)、またはモモブトモリカ科(Canthyloscelidae)です。

 

ニセケバエ科は非常に小型の種ですが、腐植質などから大量発生して害虫として扱われることもあります。日本産種は3種程度が知られていますが、研究は不十分でまだ未知種がいる可能性が高いです。

Wing veins of Canthyloscelidae
Wing veins of Canthyloscelidae

モモブトモリカ科 (マガリスネカ)は、ニセケバエ科よりは大型の種も含み、日本産種は5mm前後のものが多いです。C脈が翅の先端まで届かず終わる点などで類似しますが、R2+3脈(右図)を持つので区別できます。

世界で約15種ほどしか知られていない、非常に種数の少ない科です。

アシボソモリカ科について

アシボソモリカ科 (Synneuridae) は、三枝 (2008) で和名が付けられた科です。ExiliscelisSynneuronといった属を含む小さい科で、モモブトモリカ科に含められることもあります。

日本産種は今のところ知られていませんが、生息する可能性はあるようです。

これらの属は、モモブトモリカ科と違い、R4+5脈が翅の端に達する点で区別されます。

 

 

特徴XIVに当てはまらない→XVへ 

 

特徴 XV   

 

Axymyiidae sp.
Axymyiidae sp.

・脛節に距はない。

・触角はふつう短い。

・腹部は太く、脚は比較的短い。

・翅に基室は1つしかない。

 

  →クチキカ科(Axymyiidae)です。

 

世界的に数種しか知られていない、種数の少ない科。日本からはヤマトクチキカが知られているが、ほかに未記載種があるとされています。翅脈はキノコバエモドキ科に似ます。

 

 

ここまでで科に落ちなかった場合

 

・図示していない科も多数ありますので、どこかの特徴でうまく落ちなかった可能性があります。特にガガンボ類、キノコバエ類は多様な形態をもっています。田中(2000)、三枝(2008)、笹川(2013)などの検索表を使用して、再度ご検討ください。

・また、触角が4節以上でも、短角亜目に含まれる科もあります(例:キアブ科、キアブモドキ科など)。亜目が間違っていないかも再度ご検討ください。

 

・これまで日本から記録のない科・属・種については、この検索ではうまく落ちません。どうしても不明な場合は、直接ご連絡いただくか、双翅目の掲示板(外部サイト)などでお問い合わせいただくこともご検討ください。

 

・内容はできるだけ正確を期したつもりですが、うまく同定できないなどの不具合もあるかと思います。お気づきの点がありましたら、ぜひお知らせください

 

・使用画像

 

・Tipula paludosa : Image by  neurovelho CC-BY-SA 3.0

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tipula_paludosa.jpg

 

・Tipulidae wing vein : Image by Giancarlo Dessì CC-BY-SA 3.0

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tipulidae_wing_veins-1.svg

 

・Leptosciarella_subspinulosa by Kai Heller CC-BY 3.0

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Leptosciarella_subspinulosa.jpg

 

・Fungus Gnat by MAF Plant Health & Environment Laboratory  CC-BY 3.0

http://padil.gov.au/maf-border/Pest/Main/140612/31980

 

・Ceratopogonid fly- Ceratopogonidae barr 07 by Lucinda Gibson Museum Victoria CC-BY 3.0

http://www.padil.gov.au/barrow-island/Pest/Main/137252 

 

・Unknown_insect-6 by EugeneZelenko CC-BY-SA 3.0

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Unknown_insect-6.jpg 

 

・Lestremiini wing veins, Cecidomyiinae_wing_veins, Chironomidae_wing_veins, Culicoides_wing_veins, Thaumaleidae wing veins, Sylvicola wing veins, Hyperoscelis wing veins, Hesperinidae wing veins by Giancarlo Dessi CC-BY-SA 3.0

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lestremiini_wing_veins.svg 

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cecidomyiinae_wing_veins.svg 

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Chironomidae_wing_veins.svg

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Culicoides_wing_veins.svg

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Thaumaleidae_wing_veins.svg

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Sylvicola_wing_veins.svg

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hyperoscelis_wing_veins.svg

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hesperinidae_wing_veins.svg

 

・Psychodidae 01 by  Fritz Geller-Grimm CC-BY-SA 3.0

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Psychodidae_01.jpg

 

・CDC-Gathany-Aedes-albopictus-1 by James Gathany, CDC Public Domain 

 CDC-Gathany-Aedes-albopictus-1.jpg

 

・Sylvicola cinctus by Marko Mutanen CC-BY-NC 3.0

Sylvicola cinctus

 

・Bibio pomonae by Styko CC-BY-SA 3.0

Bibio pomonae

 

・Scatopsid GC sp.2 by BIO Photography Group CC-BY-NC-SA 3.0

ScatopsidGC sp.2

 

・Axymyiidae by BIO Photography Group CC-BY-NC-SA 3.0

Axymyiidae