双翅目の科についてごく簡単に解説します。写真はほとんどがWikimedia commons のものを使用(一部例外は下部に記載)。文献は主に日本産の種を同定する際に有用なものを挙げています。
採集難易度は、比較的身近な環境でも見られる種を含む科では低めですが、もちろん種によって採集難易度が違いますので、目安程度で考えて下さい。
同定難易度は、1)属・腫の数が多い、2)微細な形態差での同定が必要、3)同定の手引きとなる文献が少ない、4)分類学的研究が進んでいない、などを指標としていますが、もちろん科の中でも同定難易度が高い/低い分類群が混ざっていますので、あくまで参考程度です。
アシナガバエ科 Dolichopodidae | Brachycera | |
全世界既知種数 | 約7500 | |
日本既知種数 | 約100 | |
推定日本未知種数 | 約400 | |
採集難易度 | ★★~ | |
同定難易度 | ★★★★ | |
ほとんどの種で幼虫・成虫共に肉食性で、他の昆虫などを餌としている。湿地・河川・海岸・林床・樹上・草地など多様な環境で見られる。その分種数は多く、特に日本産の種は研究が遅れており、種までの同定は容易でない。 | ||
文献:桝永 (2005)、三枝 (2008)、田悟(2010)、田悟(2012)、Yang (2011) |
アタマアブ科 Pipunculidae | Brachycera | |
全世界既知種数 | 約1300 | |
日本既知種数 | 約100 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★~ | |
同定難易度 | ★★★ | |
頭部のほとんどが複眼からなる双翅目。草地や樹上で見られる。日本産種については、Morakoteらによる一連の総説があるが、小型の種が多いため同定には慣れが必要。 | ||
文献:Morakote and Hirashima (1990a, 1990b, 1990c, 1990d)、Morakote et al. (1990a, 1990b) |
アブ科 Tabanidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約4500 |
|
日本既知種数 | 約115 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★~ | |
同定難易度 | ★★ | |
吸血性の種などを含むため、害虫としての研究が進んでいる。比較的大型の種を多く含むため、同定形質の観察難易度は高くない。なおアブ科はメスで同定するのが通例になっており、オスでの同定はメスに比べ難しい。 | ||
文献:Takahashi (1962)、Hayakawa (1985)、早川 (1990a, 1990b) |
アブラコバエ科 Chamaemyiidae | Brachycera | |
全世界既知種数 | 約330 | |
日本既知種数 | 6 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★~ | |
同定難易度 | ★★★ | |
小型の双翅目で、体色が銀色であることが多い。幼虫がアブラムシなどを捕食するため、害虫駆除に利用されることが期待されている。世界的にも種数は多くなく、日本から記録されている種も少ない。 | ||
文献:Kato (1949) |
アミカ科 Blephariceridae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約300 |
|
日本既知種数 | 約30 | |
推定日本未知種数 | 少数 | |
採集難易度 | ★★★~ | |
同定難易度 | ★★ | |
原始的な双翅目の科の一つとされる。主に清流・渓流に生息し、幼虫は流れの中にある岩に張り付いて生活している。 | ||
文献:Kitakami (1931)、津田 (1962)、三枝 (2008) |
アミカモドキ科 Deuterophlebiidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約15 |
|
日本既知種数 | 1 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★★★ | |
同定難易度 | ★ | |
アミカ科と並んで原始的な双翅目の科の一つ。アミカ科同様渓流に生息。日本産種はニホンアミカモドキ Deuterophlebia nipponica 1種のみが記録されているが、採集記録は極めて少なく、絶滅危惧II類に指定されている。 | ||
文献:Kitakami (1938), 津田 (1962), 西尾 (2001,2004, 2011, 2013) |
イエバエ科 Muscidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約5200 |
|
日本既知種数 | 約250 | |
推定日本未知種数 | 多数 | |
採集難易度 | ★~ | |
同定難易度 | ★★★ | |
衛生害虫として著名な種を含む科。草地・海岸などのほか、家屋内など身近な環境でも見られる。種数も多く、一部の顕著な種を除いては、同定は容易でない。日本産種は『日本のイエバエ科』(2003)でまとめられたが、まだ相当数の未記録種を抱えているとされる。 | ||
文献:Shinonaga and Kano (1971)、Shinonaga (2003)、大石・村山 (2014) |
オドリバエ科 Empididae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約5000* |
|
日本既知種数 | 約200 | |
推定日本未知種数 | 約800種~ | |
採集難易度 | ★★~ | |
同定難易度 | ★★★★ | |
アシナガバエ科に近縁で、多様な形態・生態をもつ種数の多い科。メスへ求愛餌を用いて求愛行動をする種が知られる。森林や河川、草地などで比較的普通に見られ、属までの絵解き検索表があるが(三枝 1995)、極めて多数の未記録種を抱えている科で、種までの確実な同定は簡単ではない。(*セダカバエ科 Hybotidaeなどを亜科として扱った場合) | ||
文献:三枝 (1995)、三枝 (2008) |
オドリバエモドキ科 Hilarimorphidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約30 |
|
日本既知種数 | 1 | |
推定日本未知種数 | 少数 | |
採集難易度 | ★★★★★ | |
同定難易度 | ★★ | |
オドリバエに形態が似るが、ムシヒキアブ上科に含まれるため、オドリバエ科(オドリバエ上科)とはあまり近縁ではない。日本では九州・南西諸島から1種、クロオドリバエモドキ Hilarimorpha nigra が知られるが、記録は極めて少なく、さらなる記録がまたれる。 |
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文献:Saigusa (1973)、三枝 (2008) |
カ科 Culicidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約3500 |
|
日本既知種数 | 114 | |
推定日本未知種数 | 0? | |
採集難易度 | ★ | |
同定難易度 | ★★ | |
ヒトの血を吸い、マラリアやデング熱を媒介する種を含むため、防除の観点から分類学的研究も非常に進んでいる。日本産種も非常によく調べられており、未知種が発見できる可能性は低い。 |
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文献:田中 (2005) |
ガガンボ科 Tipulidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約14000* |
|
日本既知種数 | 約700 | |
推定日本未知種数 | 約2000以上 | |
採集難易度 | ★~ | |
同定難易度 | ★★★~ | |
脚が極めて長く、大型になる双翅目。捕獲自体は比較的容易であるが、もろく壊れやすいため綺麗に標本にするのは容易でない。既知種数・未記録種数ともに双翅目の中で最高レベルに多く、同定が難しいグループも多い。(*ヒメガガンボ科 Limoniidae などを亜科として扱った場合) |
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文献:中村 (2005) |
ガガンボダマシ科 Trichoceridae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約150 |
|
日本既知種数 | 約15 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★~ | |
同定難易度 | ★★★ | |
小型のガガンボ科といった形態の科。冬季にも見られる数少ない科で、ガガンボ科と違い翅を重ねて止まるという特性がある。 |
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文献:Nakamura and Saigusa (1997) |
カバエ科 Anisopodidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約150 |
|
日本既知種数 | 6 | |
推定日本未知種数 | 約10以上 | |
採集難易度 | ★★★~ | |
同定難易度 | ★★★★ | |
いわゆる Gnat と呼ばれるキノコバエ上科に含まれる。キノコバエ科の亜科として扱われることもある。腐食性や菌食性の種が知られる。日本産種は翅に紋がある種が中心だが、分類学的研究はまだ中途段階にある。 |
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文献: |
カモドキ科 Lygistorrhinidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約30 |
|
日本既知種数 | 1 | |
推定日本未知種数 | 少数 | |
採集難易度 | ★★★★ | |
同定難易度 | ★★ | |
いわゆる Gnat と呼ばれる、キノコバエ上科に含まれる分類群。キノコバエ科などに近縁で、キノコバエ科に含む場合もある。生態などはわかっていない点が多い。日本産既知種は1種、マダラカモドキ Lygistorrhina pictipennis のみ。 |
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文献:Okada (1937) |
キアブ科 Xylophagidae (クサアブ科、クシツノアブ科) | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約130 |
|
日本既知種数 | 約15 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★★ | |
同定難易度 | ★★ | |
中型から大型になる双翅目で、森林などで見られる。クサアブ科 Coenomyiidae、クシツノアブ科 Rachiceridaeを独立した科として扱うことも多い。特にクシツノアブ科の種は記録が少なく、簡単に見られる種ではない。 |
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文献:Nagatomi and Saigusa (1969)、永富・大石 (2003) |
キアブモドキ科 Xylomyidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約130 |
|
日本既知種数 | 約10~ | |
推定日本未知種数 | 少数 | |
採集難易度 | ★★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
森林の朽木などで見られる双翅目。キアブ科によく似る。日本での分布記録は多くない。 |
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文献:Nagatomi (1993)、永富・大石 (2001) |
キノコバエ科 Mycetophilidae s.s. | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約4500 |
|
日本既知種数 | 約250 | |
推定日本未知種数 | 数百種以上 | |
採集難易度 | ★★ | |
同定難易度 | ★★★★★ | |
水辺や樹上、菌類の周辺などでよく見られる双翅目。ツノキノコバエ科などを含むこともあるが、ここでは分けて扱う。害虫とされる種もあるが、日本産種の分類学的研究は双翅目全体の中でもとりわけ遅れており、おびただしい量の未記録属、未記録種があるとされる。そのため、一部の種を除いては、正確に同定するのは困難を極める。 |
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文献:Sasakawa and Kimura (1974)、Sasakawa (2008) |
キノコバエモドキ科 Pachyneuridae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
2~ |
|
日本既知種数 | 1 | |
推定日本未知種数 | 若干 | |
採集難易度 | ★★★ | |
同定難易度 | ★★ | |
極めて少数の種を含む科。ハルカ科を含むとされることもある。キノコバエを大きくしたような形態で、全長は1cmを超える。北海道では比較的普通。日本からはモイワキノコバエモドキ Pachyneura fasciata 1種が記録されている。 |
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文献:Okada (1934) |
キモグリバエ科 Chloropidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約2800 |
|
日本既知種数 | 約160 | |
推定日本未知種数 | 少数 | |
採集難易度 | ★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
樹木や草本の上で普通に見られる科。虫こぶを形成する種もいる。体色が黄色と黒の種が目立つが、ハモグリバエ科にも似た配色の種がいるため注意。日本産種はKanmiya (1983) で一度まとめられているが、その後も新記録種が追加されている。 |
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文献:Kanmiya (1983)、Kanmiya (2006) |
クチキカ科 Axymyiidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約10 |
|
日本既知種数 | 1 | |
推定日本未知種数 | 数種 | |
採集難易度 | ★★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
かつてはキノコバエモドキ科に含まれた科だが、近年では独立した科とするのが一般的。日本には1種、ヤマトクチキカ Axymyia japonica が知られるが、他に数種の未記録種があるとされる。 |
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文献:Ishida (1953) |
クチキバエ科 Clusiidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約300 |
|
日本既知種数 | 約25 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
森林などで見られる科。形成されて時間の経った二次林で種数が豊富と考えられている。日本産種はSueyoshi (2006)で一度まとめられたが、南西諸島の種などで研究が不十分である。 |
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文献:Sueyoshi (2006) |
クモバエ科 Nycteribiidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約280 |
|
日本既知種数 | 11 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
コウモリに寄生して吸血するハエ。翅はなく、クモのような外見をしていることからこの和名がある。体長が小さく同定難易度は低くない。Maa (1976) "A synopsis of Diptera Pupipara"で、日本産の主な種について交尾器の図示等がある。 |
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文献:Maa (1976)、Mogi (1979)、Mogi et al. (2002) |
クロバネキノコバエ科 Sciaridae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約2400 |
|
日本既知種数 | 約100 | |
推定日本未知種数 | 数百種以上 | |
採集難易度 | ★★ | |
同定難易度 | ★★★★★ | |
植物や菌類を利用する小型の双翅目。人家の水回りなどに発生することも多く、衛生害虫・農業害虫として駆除対象となることが多い科。分類学的研究は世界的に極めて遅れており、全世界で数千種の未記載種がいるとされ、系統学的な位置づけも明瞭でない。日本産種の研究も進んでおらず、解明率は1割程度とされている。 |
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文献:笹川 (2003)、須島 (2004) |
クロツヤバエ科 Lonchaeidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約520 |
|
日本既知種数 | 7 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
小型の黒い双翅目で、果実等を食害することがあるため害虫としても扱われる。日本産の既知種数は多くなく、未記録種の追加が見込まれる。 |
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文献:笹川 (1958)、笹川 (1964)、MacGowan and Okamoto (2013) |
クロバエ科 Calliphoridae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約1100 |
|
日本既知種数 | 約60 | |
推定日本未知種数 | 若干 | |
採集難易度 | ★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
動物の死骸や糞を利用する種が多く、一般的なハエのイメージに近い科。衛生害虫として研究が進んでいる科で、日本産種の分類学的知見は比較的蓄積されている。 |
||
文献:Kano et al. (1967)、倉橋 (2010) |
ケシショウジョウバエ科 Periscelididae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約90 |
|
日本既知種数 | 5 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★ | |
同定難易度 | ★★ | |
外見はショウジョウバエ科に似た小さな科。ただし分類学的にはさほど近縁ではない。日本産種は Sueyoshi and Mathis (2004) で5種が記録されている。 |
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文献:Sueyoshi and Mathis (2004) |
ケズメカ科 Ditomyiidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約90 |
|
日本既知種数 | 約10 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
キノコバエ科に含むこともあったが、現在は独立した科とするのが一般的。幼虫は朽木やキノコ等で生活するとされる。 |
||
文献:Sasakawa (1963)、Saigusa (1973) |
ケバエ科 Bibionidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約700* |
|
日本既知種数 | 36 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★ | |
同定難易度 | ★★~ | |
早春に雑木林などで一斉に発生することが知られる科。幼虫が集団で地面の上を移動する、大量の個体が群飛するなどの性質が知られ、不快害虫としても扱われる(*ヒゲナガケバエ科、トゲナシケバエ科を含めた場合)。 |
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文献:Hardy and Takahashi (1960)、Okada (1938)、須島 (2004) |
ケブカハマバエ科 Helcomyzidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
12 |
|
日本既知種数 |
1~ |
|
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
海岸性の双翅目。非常に種数の少ない科で、日本からの記録も2例程度と極めて少ない。ベッコウバエ科に含むこともある。 |
||
文献:岡留(1971)、Mathis (2011) |
ケヨソイカ科 Chaoboridae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約50 |
|
日本既知種数 | 4 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
カ科に似た姿の種を含む科。近年、亜科として扱われていたチスイケヨソイカが独立した科となった。田中他(2006)『皇居の内濠より得られた原生動物』にて2種の幼虫の記録があるが、採集記録は多くない。 |
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文献:田中他 (2006) |
コウモリバエ科 Streblidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約230 |
|
日本既知種数 | 4 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
クモバエ科同様、コウモリに寄生して吸血するハエ。ただしクモバエ科と違い翅はある。基本的に生きたコウモリからしか得られず、採集は難しい。 |
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文献:Maa (1976)、Mogi et al. (2002) |
コガシラアブ科 Acroceridae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約500 |
|
日本既知種数 | 約15 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
頭部が非常に小さく、胸背部が盛り上がる、特異な形態の双翅目。成虫は花の蜜などを摂食しているが、幼虫はクモ寄生者であることが知られる。日本産種に関する情報は少ない。 |
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文献:Schlinger (1971) |
コシボソガガンボ科 Ptychopteridae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約70 |
|
日本既知種数 | 13 | |
推定日本未知種数 | 少数 | |
採集難易度 | ★★★~ | |
同定難易度 | ★★~ | |
ガガンボ科に似た形態であるが、腹部にくびれがあるという特徴がある。日本からはオビコシボソガガンボが比較的普通に知られる。しかしヒメコシボソガガンボ属の種は採集記録が少ない。 |
||
文献:Nakamua and Saigusa (2009) |
シギアブ科 Rhagionidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約700~ |
|
日本既知種数 | 約50 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★~ | |
同定難易度 | ★★★★ | |
中型~大型の種を含む科。日本産種は故永富博士によってある程度記載されているが、まだ一定数の未知種を含むと考えられている。幼虫が水生の種も知られている。 |
||
文献:Nagatomi (1958, 1960, 1961) など断片的 |
シダコバエ科 Teratomyzidae |
Brachycera | |
全世界既知種数 |
約20 |
|
日本既知種数 |
約3 |
|
推定日本未知種数 | 少数 | |
採集難易度 | ★★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
体長は大きくても3mm程度の小型の科。シダ植物の下などで網を振ると採集されることがある。日本からは3種程度が知られるが、Teratomyza japonica (Papp, 2011) 以外は学名未決定で、種までの正確な同定は難しい。 |
||
文献:三枝 (2008)、Papp (2011) |
シマバエ科 Lauxaniidae |
Brachycera | |
全世界既知種数 |
約1800 |
|
日本既知種数 |
約85 |
|
推定日本未知種数 | 相当数 | |
採集難易度 | ★~ | |
同定難易度 | ★★~ | |
体長2-7mm程度の種が中心で、種数は非常に多い。翅や胸部に模様がある種もある。日本産種の研究は散発的に進んでいるが、まだ未記載種も残っており、属によっては種までの同定が確定しないことも多い。 |
||
文献:Sasakawa and Ikeuchi (1982, 1983, 1985)、Sasakawa (2002)、Sasakawa (2005)、Okadome (2010, 2011) |
シュモクバエ科 Diopsidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約160 |
|
日本既知種数 | 1 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★★ | |
同定難易度 | ★ | |
アフリカ大陸に多い熱帯系の科。多くの種で、眼が撞木のように左右に突き出している。日本からは、1997年にヒメシュモクバエ Sphyracephala detrahens が八重山諸島から発見されている他は知られていない。 |
||
文献:Ohara (1997) |
シラミバエ科 Hippoboscidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約215 |
|
日本既知種数 | 26 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★~ | |
同定難易度 | ★★★ | |
哺乳類や鳥類に寄生して吸血するハエ。体は扁平で、翅がある種とない種がある。偶発的にヒトに付着、吸血することもあるとされる。卵は産まず、幼虫は雌の体内で育つ。 |
||
文献:Maa (1979)、Mogi et al. (2002) |
シロガネコバエ科(クロコバエ科) Milichiidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約250 |
|
日本既知種数 | 約15 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
体長1-3mm程度の小型の科。捕食性の昆虫やクモが得た獲物に飛来して盗み食いする習性が知られている(労働寄生)。幼虫がアリの巣を利用する好蟻性の種も知られる。日本産種の文献は乏しい。 |
||
文献:Brake (2000) |
チスイケヨソイカ科 Corethrellidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約62 |
|
日本既知種数 | 4 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★★★ | |
同定難易度 | ★★ | |
カに似た形態の、吸血性の双翅目。近年ケヨソイカ科から独立した小さな科。カエルから吸血しているとされ、専らライトトラップやカエルの鳴き声トラップなどで採集される。 |
||
文献:Miyagi (1980)、宮城他 (2008) |
チスイコバエ科 Carnidae |
Brachycera | |
全世界既知種数 |
90 |
|
日本既知種数 |
3 |
|
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★★ | |
同定難易度 | ★★~ | |
体長1-2mm程度の小型の種。種数は少ない。動物に寄生する種や腐肉食の種がいる。日本からは、鳥のヒナ等に寄生するトリチスイコバエなど、2種が知られているが、非常に小型である上、鳥の巣内など特殊な環境で生活するため、採集は容易ではない。 |
||
文献:Iwasa et al. (2000, 2008), 田悟 (2011) |
チーズバエ科 Piophilidae |
Brachycera | |
全世界既知種数 |
約100 |
|
日本既知種数 |
6 |
|
推定日本未知種数 |
少数 |
|
採集難易度 | ★★★★ | |
同定難易度 | ★★~ | |
ほとんどの種の成虫は腐肉食で、幼虫は腐肉のほか燻製やチーズなども利用する。その特徴を利用し、カース・マルツゥ(イタリアのチーズの1種)を作る時には、意図的にチーズバエの幼虫を用いて発酵させる。腐肉トラップなどで得られる。 |
||
文献:Iwasa (1998) |
チャボキノコバエ科 Diadocidiidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約20 |
|
日本既知種数 | 3 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★~ | |
同定難易度 | ★★★ | |
キノコバエ科に含むこともあるが、近年では独立した科とされる。非常に小さい科で、日本からは2属3種が知られる。 |
||
文献:Sasakawa (2004) |
チョウバエ科 Psychodidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約3000 |
|
日本既知種数 | 数十程度 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★ | |
同定難易度 | ★★★~ | |
毛で覆われたハート型の翅をもつ科で、蛾のような外見から英名を moth flies という。日本産種は徳永博士らによる一連の研究があるが、研究は不十分と考えられ、確実な同定は簡単ではない。 |
||
文献:Tokunaga and Komyo (1954, 1955a, 1955b), Tokunaga (1958, 1961), Quate (1966), Jezek and Mogi (1995) |
ツノキノコバエ科 Keroplatidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約1000 |
|
日本既知種数 | 約15 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★ | |
同定難易度 | ★★★★ | |
キノコバエ科に含むこともあるが、独立した科とされることが多い。幼虫が発光するヒカリキノコバエなどが含まれる。他のキノコバエ類と同様、分類学的研究は十分とはいえない。 |
||
文献:Okada (1938) |
ハネオレホソバエ科 Strongylophthalmyiidae |
Brachycera | |
全世界既知種数 |
55 |
|
日本既知種数 | 6 | |
推定日本未知種数 | 少数 | |
採集難易度 | ★★★ | |
同定難易度 | ★★★ | |
2属55種の小さい科。いくつかの種で、幼虫が樹皮の下で生活し、成虫も樹皮上で見られることがある。日本では Strongylophthalmyia 属の種が数種知られるほか、未知種もいるとされる。 |
||
文献:Iwasa (1992, 1995), Iwasa and Evenhuis (2014) |
ハネカ科 Nymphomyiidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約30 |
|
日本既知種数 | 3~ | |
推定日本未知種数 | 若干 | |
採集難易度 | ★★★★★ | |
同定難易度 | ★★ | |
原始的な双翅目の1群で、Tokunaga (1932) によりその存在が初めて示された。世界的にも種数が少ない。春先に渓流で群飛することが知られるが、産地は極めて限られており、採集記録は非常に少ない。 |
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文献:Tokunaga (1932) |
ハルカ科 Cramptonomyiidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
3 |
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日本既知種数 | 1 | |
推定日本未知種数 | 若干? | |
採集難易度 | ★★★ | |
同定難易度 | ★ | |
キノコバエモドキ科に含まれるともされる科。世界的にも種数の少ない科で、日本からは固有種のハマダラハルカ Haruka elegans 1種のみが知られるが、絶滅危惧種に指定されており数は多くない。 |
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文献:Okada (1938) |
ヒゲブトコバエ科 Cryptochetidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約30 |
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日本既知種数 | 2 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★ | |
同定難易度 | ★ | |
熱帯に多い種で、日本からは2種が知られる。クロメマトイ Cryptochetum nipponense は、目や眼鏡にまとわりつくように飛来してくる。幼虫はカイガラムシの内部寄生者として知られる。 |
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文献:Foote and Arnaud (1958), Sasakawa and Arnaud (1960) |
ヒメカバエ科 Mycetobiidae | Nematocera | |
全世界既知種数 |
約25 |
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日本既知種数 | 1 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★★ | |
同定難易度 | ★ | |
カバエ科に含まれるともされる科。種数の少ない科で、日本からはナミヒメカバエ Mycetobia pallipes 1種のみが記録されている。未知種がいる可能性もあるが、記録は少ない。 |
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文献:三枝 (2008) |
ミツバチシラミバエ科 Braulidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
8 |
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日本既知種数 | 1? | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★★★★ | |
同定難易度 | ★ | |
ミツバチに寄生する、シラミのような体型の翅のない双翅目。日本からは世界的に分布するミツバチシラミバエ Braula coeca が分布するとされるが、正確な標本記録がなく、近年採集されたという情報も皆無である。 |
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文献:江崎 (1922) |
ムシヒキアブモドキ科 Mydidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約450 |
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日本既知種数 | 1 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★★★ | |
同定難易度 | ★ | |
体長約9-60mmの、中型~大型の種を含む科。日本にはムシヒキアブモドキ Nemomydas gruenbergi 1種のみが、八重山諸島に分布していることが知られる。 |
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文献:Nagatomi and Tawaki (1985) |
モモブトホソバエ科 Megamerinidae | Brachycera | |
全世界既知種数 |
約11 |
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日本既知種数 | 2 | |
推定日本未知種数 | ? | |
採集難易度 | ★★ | |
同定難易度 | ★ | |
種数の少ない科。 体長10mm前後になる。生態はよくわかっていない。日本からはクロフトモモホソバエ Texara compressa が比較的普通に知られる。 |
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文献: |
使用画像(Wikimedia commons以外)
アミカ科
Philorus viridis ユミアシヒメフタマタアミカ 著者撮影.
クロツヤバエ科
Silba excisa. 著者撮影.
シダコバエ科
Teratomyza sp. 著者撮影
オドリバエモドキ科
Webb, D. W. 1981. 46. Hilarimorphidae . in: McAlpine J.F. (Ed.), Manual of Nearct. Dipt. 1:603-605.
キノコバエモドキ科
Wood D.M. 1981. Pachyneuridae. in: McAlpine J.F. (Ed.), Manual of Nearctic Diptera. pp. 213-216.
コウモリバエ科
Wenzel, R.L. and B.V. Peterson. 1987. Streblidae. in: McAlpine J.F. (Ed.), Manual of Nearctic Diptera. 1293-1301.
ハネカ科
Courtney, G. W. (2004) Insecta: Diptera, Nymphomyiidae. pp.769-774. In: Yule, C.M. & H. S. Yong (eds), Freshwater Invertebrates of the Malaysian Region. Academy of Sciences, Malaysia. pp.861.
ハルカ科
Okada, I. 1938. DIE PHRYNEIDEN UND PACHYNEURIDEN JAPANS(Diptera, Nematocera). Journal of the Faculty of Agriculture, Hokkaido Imperial University 42(2): 221-238.
アブラコバエ科
BOLD Systems - Chamaemyiidae by Marko Mutanen, University of Oulu CC-BY-NC 2.0
カモドキ科
Fungus Gnats Online - Lygistorrhina by Jostein Kjaerandsen, CC-BY-NC 3.0
クチキカ科
BOLD Systems - Axymyiidae by BIO Photography Group, Biodiversity Institute of Ontario CC-BY-NC-SA 3.0
ケズメカ科
BOLD Systems - Ditomyia fasciata by Zoologische Staatssammlung Muenchen CC-BY-SA 3.0
ケヨソイカ科
Chaoborus crystallinus by Mick E. Talbot
CC-BY-NC-SA 2.0
シロガネコバエ科
Milichiella lacteipennis by Steve Marshall CC-BY-NC 3.0
チスイケヨソイカ科
BOLD Systems Corethrella by BIO Photography Group, Biodiversity Institute of Ontario CC-BY-NC-SA 3.0
チャボキノコバエ科
Fungus Gnats Online - Diadocidiidae by Jostein Kjaerandsen, CC-BY-NC 3.0
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